「杖を買いに来てたって事はも今年からホグワーツだよな?」


「『も』って事はやっぱりシリウスも今年から?」


「おう!あ、なあ、何処の寮に入りたいと思う?」






"何処の寮"。そういえば自分はこの時代では何処の寮へと入るのだろう。未来と過去、どちらとも自分ha
グリフィンドールに所属していた。それは組み分け帽子に決められた事ではない。自分が自ら望んでグリフィンドールへと所属していた。組み分け帽子には《何処の寮へ入っととしても君なら上手くやっていけるだろう》と過去と未来で同じ事を言われた。きっと今回も同じ事を言われるだろう。






「そうだなー…グリフィンドールかな」






今回の自分の仕事を考えるとグリフィンドールが一番動きやすそうだ。グリフィンドールにいれば時空の歪みを探しながら彼等を守る事がきっと出来る筈。






「そういうシリウスは?」


「俺もグリフィンドールだな!」






やっぱり。何となくその場の流れでお決まりの質問をしてみれば、返ってきた答えは予想通りの答え。あまりに予想とぴったりの答えだったからつい小さく笑ってしまった。この分ならシリウスは確実にグリフィンドールへ入れるだろう。あの帽子は被った者の入る寮を独断で決めるものではないから。






「…何笑ってんだよ」


「いや、あまりにも即答だったなーって」







この空気は知ってる。前にも感じた事があるから。この優しくて暖かいこの場の雰囲気。それはきっとシリウスが作り出してるもの。未来の世界でシリウスと話している時に感じたものと同じ。








「………」


「?、シリウス?ごめんね、怒った?」


「…え?や、別に何でもねえよ。今頃俺について来てた奴等どうしてるかなーっと思ってさ」


「あ、そっか。脱走してきたんだもんねー」







未来の彼は凄く楽しそうに色々な事を話してた。それはきっと長年話し相手がいなかったから。冷たくて孤独と絶望しかない監獄に閉じ込められていたからなんだと思う。私がもし今回の目的を達成出来なければ、今私の目の前にいるシリウスも未来の彼と同じように監獄へ連行され、最期は出口の無い迷宮へと逝ってしまう。










どうしてこの人なんだろう








どうして彼等なんだろう







どうして、あんな事が――








それは、私という存在がだから









私が彼等の幸せをぶち壊してしまった











わたしの、せい












Eine besondere Person
王子様の心とお姫様の心











オリバンダーの店で会ったこいつは不思議な奴だった。辺りを一瞬で凍りつかせるような冷たい目と、それを溶かすような暖かい目とを両方持っていた。もっと簡単に例えるならばこいつ、は自分の中に光と闇を持ってるような気がした。否、光と闇なんか人間誰しも持っていて当たり前。俺だってある。けど、のは何かが俺達とは違う気がした。






杖を買いに来てたって事はも今年からホグワーツだよな?」


「『も』って事はやっぱりシリウスも今年から?」


「おう!あ、なあ、何処の寮に入りたいと思う?」






こうやって話してれば俺と歳の変わらない只の女の子なのに、その見た目とは裏腹にこいつはかなり強い。いかにも戦闘慣れしているような動きをオリバンダーの店で見せた。勿論、あの目もきっと戦闘慣れしている証拠。下っ端だけど仮にもブラック家のボディーガードがこいつの一睨みで動けなくなっていた。一体は何者なんだ?






「そうだなー…グリフィンドールかな」






でもそれを聞くのは、怖い。あの強さは並大抵の鍛錬じゃ身につくものじゃない筈だ。しかもこいつは俺と同じ歳。あの強さを身につけれるにはかなり小さい頃から厳しい修行をしてなければ無理だ。と、すればもしかしたら俺がしようとしている質問はにとってタブーの出来事かもしれない。もし俺がそのタブーに触れてしまったらこいつは、直に俺の目の前から消える気がした。触れたくない過去にこれ以上触れられる前に相手の前から姿を消す。俺ならきっとこの方法をとる。


今まで会ってきた奴等なら別に俺の前からいなくなろうとどうでも良かった。寧ろ早く何処かへ行ってほしかった。けど、は違う。







「そういうシリウスは?」


「俺もグリフィンドールだな!」






と一緒に話すこの空間が凄く心地良い。こいつは俺がブラック家だから媚を売るために話してる訳ではなく、俺を《シリウス・ブラック》としてみて話してくれている。だから、なのか?俺を一時でもブラック家の鎖から解放してくれて、俺をシリウスとして見てくれた奴だから離れて行ってほしくないのか?



否、何かが違う気がする。違わないけれど、違う。もっと他にも理由がありそうで、無い。


それに、






「…何笑ってんだよ」


「いや、あまりにも即答だったなーって」






こいつは俺を通して誰かを見ている。そんな気がする。今だってそうだ。俺に誰かを重ねて見ているような瞳(め)。凄く辛そうに見えるのは気のせいだろうか。俺を通して誰を見てるんだ?





「………」


「?、シリウス?ごめんね、怒った?」


「…え?や、別に何でもねえよ。今頃俺について来てた奴等どうしてるかなーっと思ってさ」


「あ、そっか。脱走してきたんだもんねー」






流石に俺に誰を重ねてるんだよ、とは聞けない。だから適当に誤魔化しておく。

今はこのままでも良い気がする。とのこの距離が崩れるくらいなら、こいつの隠している事は知らなくてもいい。あくまで《今は》だけどな。











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08.07.06 修正完了