「…シリウス……」
ど う し よ う 。
見つかった。しかもよりによってシリウスに。ああー、もう、どこから聞かれてた?最初からだったら何て言い訳しよう。
「…シリウス?シリウス・ブラック?」
あ、驚いてる驚いてる。まあ、驚くのも頷けるけどね。二人で行った未来の世界とのシリウスとはあんまり似てないもんね。それだけ今、目の前にいるシリウスが若いって事。
って、ディア。お願いだからこれ以上余計な発言は止めてね。できればその不思議なものを見る様な目も止めてくれると嬉しいですね。
「…だったらなんだよ」
「…いや、うん、何でもない。それより、隠れてるのはシリウスだけじゃない筈だけど?後三人は居る」
後三人?それって、
「…やっぱり…」
ディアミスの視線を受けて、今シリウスが出て来た茂みと同じ茂みからジェームズ、リーマス、ピーターが姿を現した。あ、もう本当に頭を抱えて唸りたい。
「…四人とも、何時から其処に居たの?」
「…ごめん、。僕達、の事つけて来たんだ。中庭を通った時のの様子が何だか変だったから」
つまりは最初から其処に居た、と。これはまずい。非常にまずい。別に今までディアミスと話していた内容さえ普通のものだったら其処に居てもなんの問題もない。けれど、今自分達が話していた内容は、少なくともこっちの世界の人にとっては"普通"じゃない。明らかに怪しい会話だ。
「…って、ちょっと待って」
「どうかしたか、?」
「……ディア、四人が居るの知ってたでしょ」
ディアミスは否定しながらもその目はあちこち泳いでいる。
「嘘!制御装置も付けてない貴方が例え魔法族といえども一般人の気配を察知できない筈ないでしょ!現にさっきだってシリウス以外に三人居るって解ってたじゃない!!」
「いやー、うん、あんまり聞かれても心配ない内容かなーっと思って」
「何処が!」
「でも、実際あいつ等は何の話か全く解ってないだろ?」
最後の台詞は四人に聞こえない様に言い、ディアミスが四人の方を見たのでもその視線を追って四人を見た。確かに、何が何だか解ってない顔だ。けど、ジェームズやシリウスは勘が良いし頭も冴える。そんな人達に聞かれて問題無いとは言えはしないだろ。
「えーっと、?お取り込み中悪いんだけど、幾つか質問していいかな?」
ジェームズが遠慮しながらも言った。
Eine falsche Geschichte
嘘吐きは毒りんごを食べよ
「、どうする?」
「…とりあえず私が答える」
「了解」
のその返事を聞いてディアミスは再度腕を頭の後ろで組んで傍観者となった。は内心溜息をつきながらいいよ、ジェームズ、と質問を促した。
「先ず始めにその人はの知り合い?」
ジェームズの視線がからディアミスに移った。もディアミスの方を見、返す。
「うん、私の友達」
「俺はディアミス・アルガ。明日からホグワーツの二年生だ。よろしく」
ニッコリと挨拶をするディアミスにジェームズはこっちこそ宜しく、と此方も笑顔全開ではないものの、返した。そしてその後にまだ多少不機嫌でいる隣のシリウスに向かって言った。
「だってさ、シリウス。良かったね」
「は?何がだよ」
「曰くディアミスは友達だってさ」
「べ、別にそんな事が聞きたかったんじゃねーよっ」
「(素直じゃないなー)」
シリウスはディアミスを敵だとでも思っていたんだろうか。は二人の会話が少し気にりはしたが、次の質問をする様に言った。
「じゃあ、お言葉に甘えて続けさせてもらうよ。『歪みのある世界』って何だい?」
来た。必ず来ると思ってはいたのだ。この質問は避けられないと。ディアミスは問題はないと言うけれど、私にとっては問題大有りに思えた。チラリ、とディアミスの方を見た。
「…もし、」
ディアミスがの無言の訴えに答えたかのように、急にの加勢に入った。組んでいた腕を解いて半歩前に出る。
「もし、シリウス達がの友達なんだったら今はその事については俺達に聞かない方がいい。話せばはホグワーツを退学させられる事になってるんだ」
「退学!?」
ディアミスの言葉に声をあげたのはシリウス。は嘘がバレない様に申し訳なさそうに四人の方を見ながらも胸中ではよくそんな嘘が出てくるなー、と感心の言葉を呟いていた。否、自分もディスには十分負けてはいないのだが。
「…が話したら退学…だったらどうして『俺達』なんだい?は話したら退学になるかもしれないけど、君は違うんだろ?」
「俺とは二人で一人。俺が話せばも俺と一緒に退学。が話せば俺もと一緒に退学。ま、俺はまだホグワーツに入学してないから退学、って表現は間違ってるけど」
流石、姫の中で一番の頭脳派な事だけはある。ディアミスの嘘は筋が通っている。これなら納得は出来なくても理解は出来る筈だ。
「…それは、誰が決めたんだい?」
「わしじゃよ」
ディアミス以外の全員が声のした方へ急いで視線をやった。声の主の方向へ背を向けていた四人は勿論だが、の位置からでは声の主はシリウスやリーマスのが死角となって見えなかったのだ。ディアミスだけがゆっくりとまるで散歩を楽しむように丘を登ってくるダンブルドアに気付いていた。
「っ、ダンブルドア先生!?」
今まで達に質問をしていたジェームズはかなり驚いた様子だ。ジェームズは四人に微笑みかけながら言った。
「さて、四人とも、今すぐに大広間へと向うのじゃ。ハロウィンのご馳走が待っておるぞ」
「で、でも先生…」
ダンブルドアの声色が、最後の方は何だか楽しげに聞こえた気がする。その言葉に何か抗議をしようとしたジェームズの言葉を最後まで言い終わる前にダンブルドアが遮った。
「誰しにも知られたくない事は存在するのじゃ」
「…っ」
ダンブルドアの言葉に、リーマスが微かに反応したのがには解った。
「でも、」
「…シリウス、行こう。ジェームズもピーターも、戻ろう」
今度はシリウスの抗議の言葉をリーマスが遮った。顔は俯いていて見えないけれど、きっと良い思いはしてない筈。
ごめんね、リーマス。折角のハロウィンの夜なのに嫌な思いさせて。ダンブルドアにあの言葉を言わせたのは自分だ。直接に言ってくれと頼んだ訳ではないけれども、あれ自分が言わせたも同然。
「のせいじゃない」
ディアミスの手がの頭の上に乗るり、そのままポンポン、と優しく頭を叩かれた。
「…顔に出てた?」
「大分」
その言葉を聞いては一人苦笑いを零した。
「リーマスの言う通りじゃ。四人とも、大広間へ行きなさい。此処にいても達から聞きだせはしないじゃろう?もしやディアミスから聞き出せば彼等は退学処分となるのじゃから。の友達である君達は、そんな事望まんじゃろ?
時が来れば、自身から君達に話すじゃろうて」
その言葉の後にダンブルドアから小さくウィンクを投げかけられたはそれが同意の意を示せ、という動作だと気付き、ダンブルドアに続いて言葉を発した。
「先生の言う通り時が来たら話すから。絶対に。だから今は何も聞かないでほしいの。聞かれても私達は何も答えられない」
絶対、なんて有りえる訳がない。"絶対"って重い言葉だと思う。此処での"絶対"は"約束"と同じ意味を持つ。こんなにも重い言葉なのに自分はこんなにも軽々しく使っている。
知っているのと知らないのじゃ、危険に晒される可能性が大きく違う。知れば確実に知らない時より危険になる。それなに教える訳がない。けれど今は引き下がってもらわなければ。
「…解った、を信じるよ。行こう、シリウス、ピーター、リーマス」
"信じる"。その言葉が少しだけ胸に圧し掛かった気がした。
ジェームズはまた後でね、とに手を振って丘を下り始めた。その後をリーマス、慌てた様子のピーターが追う。そして一番最後に全く納得いっていないようなシリウスが続いた。
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08.08.08 修正完了