大広間へ着くと、既に晩餐は始まっていた。遅刻した、と内心思いながらも急ぐ気配を見せずに、ジェームズ達がどの辺りに座っているのかを探す為、グリフィンドールのテーブルの近くまで歩いていく。途中チラリと見たスリザリンのテーブルには、頭の色が元に戻ったドロホフ達が。試作品だった為、そこまであの球体物には持続性が無かったのだろう。






「(ドロホフ、とその取り巻き軍団。今日から数日間は悪戯地獄を味合わせてやるからね!)」






夕食が終わったら早速実行しよう。どんな悪戯を仕掛けてやろうか。ピーターを虐めた罪と、ミネルバにチクった罪はそんなに軽いものじゃないわよ。






、こっちだ!」






グリフィンドールのテーブルの真ん中の方でシリウスが片手を上げて場所を示してくれているのが見えた。小走りでその場所まで行くと、何と意外な事に其処にはリリーも居た。あれだけジェームズ達を嫌っていた筈のリリーが、何故。






「何でリリーが…?」


ったら何時まで経っても寮に帰って来ないから、心配して癪だけどポッター達に聞きにきたのよ。そしたらペティグリューの傷はまた増えてるし、貴女は先生に連れていかれたって言うし…」


「ピーターの傷はともかく、私は別に叱られたわけじゃないから大丈夫だよ」






否、あれは叱られた部類に入るのか?まあ、いずれにしよ自分は無事だ。罰則もなければ、減点もない。

シリウスの前であり、リリーの横である席に腰を下ろしながら、ちゃっかりリリーの目の前の席を陣取っているジェームズを見て微かに笑ってしまった。






、一体何があったの?」






リリーの問い掛けに別段話しても支障はないと思い、これまでの事を話した。ピーターの虐めの事、自分がマクゴナガルに呼び出された訳。






「そうだったの…ペティグリュー、傷は大丈夫?」


「う、うんっ。平気だよっ!」


「で、。マクゴナガルには何て答えたのさ。僕達もどうして君があそこまで知っていたのか気になるね。さっきリーマスも聞いた事だけど」






チキンを口に運びながら、リリーに心配の言葉を掛けて貰ったピーターを恨めしそうに一眼した後、ジェームズはそう聞いてきた。






「教えなかったよ。ちなみに皆にもあれは秘密」


「えー」






口元に人差し指を当ててすました様に言うに一番残念そうにしたのはジェームズ。それをさらっと流したはある事に気付いた。






「あれ?シリウス全然食べてないじゃん」






そう、シリウスの皿には色々なものが取ってはあるが、どれも手付かずだった。するとシリウスの隣からいつもの様にジェームズがニヤリ、とからかう様な笑みをみせて話しに入ってきた。






「あぁ、シリウスはね、マクゴナガルに連れていかれた君の事が心配で食事も喉に通らな…」


「だー!余計な事言うじゃねぇ!」






面白そうに話すジェームズの言葉をシリウスが思いっきり遮った。その顔は仄かに赤い。という事はジェームズの言う事は本当なのか。それに先程と同じように嬉しく感じはニッコリとシリウスにお礼を言った。






「心配してくれてありがと」











Informationen
狩人の情報











「さっきのアレ、絶対にでしょ!」


「あ、やっぱりバレた?」


「どうやってあんな事したんだ?」






晩餐も終わり、大広間を生徒達が出て行く途中、言葉通りは悪戯の第一陣をドロホフ達にかましてきた。人込みに紛れてドロホフ達に杖を向け、呪文を唱えたのだ。忽ち、ドロホフ達の頭の上には鳥の様なものが現れ大きな声で喋り始めた。

『オレは最低な奴だ!オレは最低な奴だ!五歳の時公衆の面前でおねしょをした最低な奴だ!』

『オレは変人だ!オレは変人だ!実は同じ寮のレイラ・リーストが好きだ!』

など等。一人一人の鳥は別々の事を喋った。勿論鳥が喋っているのは全部本当の事だったりする。対象者が他人に絶対知られたくないという部分を探り出し、声に出す仕掛けになっているのである。いきなり現れたへんてこりんな生き物に知られたくない事を次々と暴露されてドロホフ達は何とか鳥を黙らせようと慌てて必死に止めたが、そんな事で鳥が止まる訳がなく。方法が解らないまま彼等は顔を真っ赤にして、逃げる様に大広間を出て行った。大広間に大爆笑が起こったのは言うまでもない。






「秘密。ジェームズ達に教えると絶対に悪用しそうだからね」


「心外だなー。僕達が君に教わった事を悪用するような人間に見えるかい?」


「あれ?私の教えた魔法でセブルスに悪戯をしたのは何処のどなた達でしたっけ?」


「うっ、それは…」






言葉につまってしまったジェームズとシリウスを横目には聞くなら今だ、と晩餐の時に密かに決意していた事を決行しようと決めた。






「…それはそうとシリウス。ちょっと二人だけで話したい事があるんだけど…」


「ああ、別に構わないぜ」






そう言って談話室の隅の方に移動する二人に向かって、お、愛の告白かい?、と面白そうに聞いてくるジェームズをシリウスが軽くあしらった。






「で、どうかしたのか?」


「…あのね、ほんっとうにに申し訳ないんだけど、シリウスの家に仕えてるある人物について聞きたい事があるの」






その言葉にシリウスは首を傾げた。何故。その疑問が一番始めに出てきた。ダメ、かな?、と少し遠慮がちに上目遣いで聞いてくるにNOとは言えずに誰について聞きたいのかを聞いた。シリウスの脳裏に自分の家のガードマンの長である男が浮かび上がった。もしかしなくとも、が聞きたいのはデイモスの事か?

だがシリウスの考えとは裏腹に、の口からはハルモニア、という人物の名前が出てきた。






「ハルモニア、ってお袋のメイド長やってる奴か?」


「うん。その人ってどんな人?」


「よくは知らねえけど、身形を整えろだの家柄を大切にしろだの、口煩せえババアだぜ。それにあのお袋に仕える奴だ。ろくな奴じゃねえよ。てか何であいつの事なんか聞くんだ?」


「あ、いや、もしかしたら私の知り合いかもしれないな、って思って」






あははは、と苦し紛れの笑みを顔に貼り付けた。






「ふーん。で、話を聞いた感じあいつはお前の知り合いだったっか?」


「え?あー…違う、かな」






ここで知り合いだと答えても良かったが、万が一シリウスがハルモニアにその事を話せば一発にバレる嘘なので止めておく。






「ありがと、シリウス。それから、ごめんね。シリウス自分の家の事嫌ってるのに…」


「いや、別に気にしてねえよ」






ハルモニアについて少しでも情報が仕入れられたのは大きな収穫だった。位置的にあの四人のミュータンの中で一番大きな権力をもっているのは恐らくはハルモニアだ。先ずはその彼女に変装して取り入り、彼等の細かな情報まで聞き出さなければ、今回の記憶抹消の成功の確率は上がらない。そして聞き出す為には対象者に合わせた様な人物にならなければならない。つまりは対象者に好感を持ってもらえるようにするのだ。その為にはハルモアニがどんな人物が聞かなければならなかったのだ。

家柄を大切にしろ、という事は恐らく彼女もスリザリン至上なのであろう。彼女には冬休みにでも一度会いに行ってみよう、と心に決めた。










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08.08.04 修正完了